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# 便利になったのに、仕事が減らない。
- URL: https://journal.shiroand.io/bian-li-ninatutanoni-shi-shi-gajian-ranai/
- Published: 2026-08-23T22:52:43.000Z
- Updated: 2026-08-28T18:48:42.000Z
- Author: Kosuke Shirako
- Tags: Japanese

### Noriko Interviews Kosuke

**Session 01 / Episode 02 — LIFE / Work**

火曜日、午後6時58分。

Norikoは、会議室にいた。

会議はもう終わっていた。

参加者も全員出ていった。

ホワイトボードには、誰かが残した文字がある。

**Efficiency** 
**Productivity** 
**AI Enablement**

Norikoは、その三つを眺めながらノートパソコンを閉じた。

今日の会議も、AIについてだった。

「AIを使って、マーケティング業務の生産性を30％向上させる」

上司はそう言った。

Norikoは特に反対しなかった。

むしろ賛成だった。

AIは便利だから。

困っているのは、そこではなかった。

---

**Noriko：**  
この前の続きなんですけど。

**Kosuke：**  
うん。

**Noriko：**  
AIって、人間を楽にするためのものじゃないんですか？

**Kosuke：**  
そういう期待はあるね。

**Noriko：**  
でも全然楽にならないんですよ。

**Kosuke：**  
（笑）

**Noriko：**  
笑わないでください。

本当に。

資料は早くできる。

調査も早い。

英語も翻訳してくれる。

会議の議事録も勝手にできる。

なのに帰る時間、そんなに変わってない。

**Kosuke：**  
仕事の量が増えた？

**Noriko：**  
というか。

できることが増えました。

---

Norikoは机の上のペットボトルを少し飲んだ。

---

**Noriko：**  
昔だったら、資料作成に3時間かかるから「今日はここまで」って言えたんですよ。

今は30分でできる。

**Kosuke：**  
うん。

**Noriko：**  
すると残りの2時間半に別の仕事を入れられる。

**Kosuke：**  
会社としては合理的だね。

**Noriko：**  
そうなんですよ。

そこが嫌なんです。

---

Kosukeは少し笑った。

---

**Noriko：**  
何がおかしいんですか。

**Kosuke：**  
いや。

Norikoがずっと「間違ってないのが嫌」って言ってるなと思って。

**Noriko：**  
あ。

---

Norikoは少し黙った。

---

**Noriko：**  
そうかもしれない。

会社も別に悪くないんですよ。

生産性上げようって言うの、普通ですよね。

**Kosuke：**  
普通だね。

**Noriko：**  
AI使おうって言うのも正しい。

残業減らそうっていうのも正しい。

少ない人数で成果を出そうっていうのも。

**Kosuke：**  
うん。

**Noriko：**  
全部正しいのに、なんで疲れるんですか？

---

少し間があった。

---

**Kosuke：**  
もしかすると、生産性が上がることと、人間が楽になることは別なのかもしれない。

**Noriko：**  
同じじゃないんですか？

**Kosuke：**  
会社が言う生産性って、同じ時間でどれだけ多くの成果を出せるかでしょう。

**Noriko：**  
はい。

**Kosuke：**  
人間が楽になるって、成果を増やす話じゃないから。

**Noriko：**  
……。

**Kosuke：**  
早く終わったら帰る。

何もしない。

ぼーっとする。

そういう方向に生産性を使えば、楽になる。

**Noriko：**  
会社で「AIで30％生産性が上がったので30％ぼーっとします」は通らないですよ。

**Kosuke：**  
（笑）

**Noriko：**  
ですよね？

**Kosuke：**  
うん。

だから、技術の問題じゃないんだと思う。

**Noriko：**  
何の問題ですか？

**Kosuke：**  
空いた時間を誰のものにするか。

---

Norikoは、少し姿勢を変えた。

---

**Noriko：**  
空いた時間って、私のものじゃないんですか？

**Kosuke：**  
会社にいる間は、会社のものだと考える人もいるでしょう。

**Noriko：**  
うわ。

嫌だな、それ。

**Kosuke：**  
でも契約としては、ある程度そうでしょう。

**Noriko：**  
……そうなんですよね。

---

会議室の外を、清掃スタッフが通った。

Norikoはガラス越しにそれを見た。

---

**Noriko：**  
私、最近ちょっと怖いんです。

**Kosuke：**  
何が？

**Noriko：**  
AIを使える人が評価されるじゃないですか。

だから私も使うんです。

たぶん、結構使えてるほうだと思う。

**Kosuke：**  
うん。

**Noriko：**  
そうすると仕事が早くなる。

仕事が早くなると、頼まれる。

頼まれると評価される。

評価されると、もっと頼まれる。

**Kosuke：**  
きれいなループだね。

**Noriko：**  
きれいじゃないですよ。

---

Norikoは笑わなかった。

---

**Noriko：**  
これ、どこで止まるんですか？

**Kosuke：**  
Norikoが止めない限り、止まらないかもしれない。

**Noriko：**  
それ一番困る答えです。

**Kosuke：**  
どうして？

**Noriko：**  
私が「もう無理です」って言わなきゃいけないから。

---

少し沈黙した。

---

**Noriko：**  
仕事できる人って、損じゃないですか？

**Kosuke：**  
（笑）

**Noriko：**  
いや、本当に。

できない人には頼まないでしょう。

できる人に集まる。

それで「成長機会」って言われる。

**Kosuke：**  
成長したくない？

**Noriko：**  
したいですよ。

**Kosuke：**  
じゃあいいじゃない。

**Noriko：**  
いやいやいや。

そういうことじゃない。

---

Norikoは少し前のめりになった。

---

**Noriko：**  
成長はしたい。

でもずっと全力疾走したいわけじゃない。

**Kosuke：**  
うん。

**Noriko：**  
これ、矛盾してます？

**Kosuke：**  
全然。

**Noriko：**  
でも会社だと、成長したいって言った瞬間、次のポジションの話になるんですよ。

もっと大きな仕事。

もっと責任。

マネージャー。

海外。

**Kosuke：**  
それがキャリアだからね。

**Noriko：**  
キャリアって、上に行くことなんですか？

---

Kosukeはすぐには答えなかった。

---

**Kosuke：**  
会社の中では、そう見えやすい。

**Noriko：**  
ですよね。

**Kosuke：**  
でも人生の中では違うかもしれない。

**Noriko：**  
また人生の話になった。

**Kosuke：**  
Norikoがするから。

---

Norikoは笑った。

---

**Noriko：**  
この前も思ったんですけど。

私、仕事の話してるつもりなのに、すぐ人生の話になりますね。

**Kosuke：**  
仕事に使ってる時間が長いからじゃない？

**Noriko：**  
それ、怖いこと言いますね。

---

午後7時24分。

Norikoのスマートフォンが震えた。

今日は机の上に伏せていなかった。

通知の一部が見えた。

Norikoはすぐ画面を消した。

---

**Kosuke：**  
帰らなくていいの？

**Noriko：**  
もうちょっとだけ。

**Kosuke：**  
仕事？

**Noriko：**  
仕事じゃないです。

---

返事はそれだけだった。

---

**Noriko：**  
じゃあ最後に。

もしAIで仕事が半分の時間でできるようになったら。

その半分って、本当は誰のものなんですか？

**Kosuke：**  
それを決めるのが、これからのEmploymentの問題なのかもしれない。

**Noriko：**  
Employment？

**Kosuke：**  
仕事があるかないかだけじゃなくて。

人間の時間を、誰がどう使うのか。

**Noriko：**  
……。

**Kosuke：**  
AI時代の労働って、そこが一番大きいと思う。

**Noriko：**  
じゃあ、次それ聞いていいですか？

**Kosuke：**  
どうぞ。

> **Noriko：**  
> 私、この会社にあと何年いたらいいですか？

---

Kosukeが笑った。

---

**Noriko：**  
なんで笑うんですか。

結構真剣なんですけど。

---

午後7時31分。

Norikoはノートパソコンをバッグにしまった。

ホワイトボードにはまだ三つの単語が残っていた。

**Efficiency** 
**Productivity** 
**AI Enablement**

Norikoは出口の前で一度振り返った。

そして、電気を消した。

---

### LIFE / Work

AIが仕事を速くしても、  
人間の自由時間が増えるとは限りません。

効率化によって生まれた余白が、  
次の仕事で埋められるなら、

技術は労働を減らすのではなく、  
**労働の密度を上げる**こともあります。

次に問うべきなのは、

**空いた時間は、誰のものなのか。**

---

*Noriko Interviews Kosuke will continue.*

**Next — Session 01 / Episode 03** 
**「この会社にあと何年いたら正解ですか？」**

---

## The interview ends here.

でも、Norikoの仕事は終わっても、  
彼女の一日はまだ終わっていません

---

# After Interview

### Session 01 / Episode 02

午後8時12分。

Norikoは駅の近くの小さな店にいた。

一人だった。

カウンターの端。

仕事用のバッグを足元に置き、スマートフォンを眺めている。

画面には、さっき会議室で届いたメッセージが残っていた。

> 今日、会える？

Norikoは返事をしていなかった。

その下には、別の通知がある。

会社のチャットだった。

> 明日の朝、少しだけ確認お願いできますか？

Norikoは先に会社のチャットを開いた。

**大丈夫です。確認します。**

送信。

それから、もう一つのメッセージに戻った。

しばらく画面を見ていた。

---

午後8時19分。

料理が運ばれてきた。

Norikoは写真を撮らなかった。

最近は、食べたものをSNSに載せなくなった。

誰かに見せたいと思うことが、少し減った。

その代わり。

誰か一人だけに見せることはある。

Norikoは料理の写真を一枚撮った。

送信先を開く。

少し迷ってから、送った。

数秒後。

> おいしそう。

そのあと、

> ちゃんと食べてね。

Norikoは笑った。

---

「AI使って生産性30％向上」

昼間の会議の言葉が頭に浮かぶ。

Norikoはふと思って、別の画面を開いた。

入力する。

> **仕事が早く終わると、もっと仕事を頼まれます。どうしたらいい？**

すぐに回答が返ってきた。

境界線を設定すること。  
優先順位を明確にすること。  
上司と業務量について話すこと。

全部、正しい。

Norikoは最後まで読んだ。

そして画面を閉じた。

---

午後8時31分。

さっきの相手から、またメッセージが届いた。

> 会う？

Norikoは一度、目を閉じた。

「今日はやめとく」

と入力した。

まだ送らない。

代わりに、

**疲れてるから、少しだけ。**

と書いた。

それも消した。

最終的に送ったのは、

**30分だけなら。**

だった。

---

料理は半分残っていた。

Norikoは会計を済ませ、店を出た。

夜の空気は、会社を出たときより少しだけ涼しかった。

スマートフォンが震える。

> いつものところで。

Norikoは返信しなかった。

場所は分かっていた。

---

今日の仕事は、もう終わっていた。

けれど、

Norikoが何をもって一日を終わりにしているのかは、

まだ観測されていない。

**Continues next week.**